相続登記に必要となる書類と用意の仕方

相続登記に必要となる書類と用意の仕方

相続登記の必要書類にはどのようなものがある?

相続登記の申請には、決められた書類の提出が必要です。必要な書類には種類があり、相続したケースによっては追加で必要となるものもあります。さらに、ただ収集するだけではなく提出前に作成しなければならないものもあるため、事前に情報を整理しておくことが大切です。
本記事では、相続登記の必要書類の種類から用意の仕方まで解説します。

相続登記に必要な書類の種類を知ろう

相続登記には、複数の書類が必要です。これらの書類は、
・申請者なら誰でも必要となるもの
・ケース別に必要となるもの
に分類できます。そして、これらの書類を取得するには複数の方法があります。相続登記に必要な書類の種類と、取得方法について見てみましょう。

相続登記に必要な書類

・登記申請書:登記を提出する際に必要となる書類
・故人の戸籍謄本(除籍謄本や改製原戸籍謄本を含む):故人の出生や死亡、故人と関係のある人(父母など)を確認できる帳票
・故人の住民票除票(戸籍の附票も可): 死亡によって住民登録が消された住民票
・相続人の戸籍謄本(または戸籍抄本):相続人の出生や結婚、故人や他の相続人との続柄を確認できる帳票
・相続人の住民票:相続人の氏名や住所などを確認できる帳票
・固定資産税評価証明書:所有している不動産の価値額を証明する書類
・相続関係説明図:被相続人と相続人の関係をまとめた一覧表
・委任状(代理人がいる場合):申請を代理人に委任したことを証明する書類

相続したケース別に必要な書類

相続登記には、遺産の分割方法(遺言書によるもの、法定相続分によるもの、遺産分割協議によるもの)別に必要となる書類があります。
◯遺言書がある場合に必要な書類
・遺言書:故人の遺言を記した書類

◯法定相続分で相続する場合
追加書類はありません。

◯遺産分割協議で相続する場合
・印鑑証明書:役所に届出た印鑑であることを証明する書類
・遺産分割協議書:遺産分割協議で合意に至り、その内容をまとめた書類

相続登記に必要な書類の取得方法

相続登記に必要な書類の主な取得手段は、以下の4つです。
・市町村役場の窓口
・郵送
・郵便局
・コンビニ

取得方法別に必要となる書類について、一覧表にまとめました。
取得手段
取得に必要な書類

市町村役場の窓口
・交付申請書
・本人確認書類
・手数料

郵送
・交付申請書
・本人確認書類(コピー)
・手数料(定額小為替)
・返信用封筒
・返信用切手

郵便局
・交付申請書
・本人確認書類
・手数料

コンビニ
・マイナンバーカード
・手数料

手数料は、取得する書類の種類や数によってばらつきがあります。

相続登記の必要書類を入手しよう

相続登記の必要書類は、書類の種類によって入手方法が異なります。
必要書類は以下の3種類に分類されます。
・登記申請書
・戸籍資料
・その他添付資料
各書類の入手方法について、詳しく見てみましょう。

登記申請書の入手方法

・登記申請書の入手先:自分で作成

登記申請書には決まった書き方がないため、自分で用紙を用意して作成します。もしくは、法務局のホームページに登記申請書のテンプレートが公開されていますので、そちらを使うのもよいでしょう。登記申請書の書き方については、後述します。

戸籍資料の入手方法

①戸籍謄本
・戸籍謄本の入手先:相続人/被相続人の本籍地を管轄している市町村役場
よく「故人が生まれてから死ぬまでの全ての戸籍」とありますが、一生同じ本籍であれば故人の本籍地を管轄している市町村役場で入手可能です。もし、故人が生前本籍地を変更した場合は、旧本籍地にある市町村役場から取り寄せる必要があるでしょう。

②住民票除票
・住民票除票の入手先:故人の最後の居住地を管轄している市町村役場
住民票除票に記載されている住所と、登記簿上の住所(不動産所有者の住所)が異なることがあります。その場合は、一つ前の住民票が必要となりますが、入手先はその地域を管轄している市町村役場です。

③戸籍の附票
・戸籍の附票の入手先:被相続人の本籍地を管轄している市町村役場
戸籍の附票とは、作成した住民票を記録した帳票で、戸籍簿と対で管理されています。
相続登記の際、住民票の代わりに提出が可能です。

④住民票
・住民票の入手先:相続人の居住地を管轄している市町村役場
提出する住民票に有効期限はありませんが、現住所が記載されているものに限ります。

その他添付資料の入手方法

①固定資産評価証明書
・入手先:不動産の住所を管轄している市町村役場、都税事務所(東京23区の場合)
相続登記をする際に提出する固定資産評価証明書は、登記をする年度のもの(年度末は3月)に限ります。
固定資産税評価額は、3年に1度見直しされていて、当該年度の4月より新しい評価額が適用されます。そのため、該当年度と異なる証明書を用いると、評価額が異なる恐れがあるのです。例えば、相続登記を5月に行う場合は、その年の4月に取得した固定資産表証明書を参考にしましょう。

②登記事項証明書
・入手先:管轄法務局もしくはオンライン
オンラインを利用する場合は、こちらから入手可能です。

相続登記の必要書類作成方法をわかりやすく解説

ここでは、作成が必要な書類について書き方や作成方法を解説します。

登記申請書の作成方法

・引用:https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001188765.pdf

以下を参考に、必要な項目を埋めましょう。
①原因
被相続人(不動産の所有者)が亡くなった日を記入します。

②相続人
被相続人の名前と、申請した相続人(新たな所有者)の氏名と住所、電話番号を記入します。
もし不動産を相続する相続人が複数いる場合は、全ての相続人の氏名と住所、持分の記載が必要です。

例(3人で相続する場合):
◯◯市■■町△丁目1番地 持分3分の1 山田花子
◯◯市■■町△丁目2番地 持分3分の1 山田太郎
◯◯市■■町△丁目3番地 持分3分の1 山田二郎

③添付情報
登記申請書に添付した資料名を記載します。
上図にはすでに「登記原因証明情報」と「住所証明情報」の2つが記載されていますが、前者は登記原因(相続)を証明するための情報で、ここには被相続人や相続人の戸籍資料が該当します。

④登記識別情報の通知希望
通知を受けるかどうかの有無を聞いています。受けない理由がないという場合はチェック(✓)を入れましょう。

⑤申請日と提出先の法務局名
申請日として記入するのは、書類を提出する日です。また、提出先の法務局は、申請する不動産の管轄法務局名を記入します。

⑥課税価格
固定資産評価額のことです。

⑦登録免許税
登録免許税は、登記時に発生する税金のこと。不動産の評価額に決められた税率をかけて計算し、登記申請書を提出する際に納めます。なお、⑥に0.4%をかけた数字が登録免許税の金額です。
・参照:『登録免許税の税額表』(国税庁)

⑧不動産の表示
相続登記する不動産の情報を記入します。記入する際は、登記事項証明書を参考にします。

委任状の作成方法

委任状の作成も、特に決まった形式はありません。以下の情報を盛り込んで作成しましょう。

①氏名・住所
相続登記する人の氏名と住所を記入します。

②委任する権限
記入するのは、「下記登記申請に関する一切の件」です。

③登記の目的
・単独所有の場合:「所有権移転」
・共有の場合:「◯◯(被相続人名)持分全部移転」

④原因
不動産の所有者が亡くなった日を記載します。

⑤相続人
・被相続人氏名
・相続人の住所
・相続人の氏名
を、それぞれ記入します。

遺産分割協議書の作成方法

遺産分割協議書には特に決まった形式はありませんが、以下の情報を盛り込みます。
・被相続人に関する情報:氏名、死亡日、本籍地、最後の住所
・各相続人が相続した財産
・相続人全員の署名と押印

書き方は、法務局が公開している遺産分割協議書をご参考ください。

・引用:『国税庁ひな形』

相続関係説明図の作成方法

相続関係説明図には特に決まった様式はなく、自分で作成する必要があります。

相続関係説明図の作成に必要な書類は、以下のとおりです。
・被相続人の誕生時から死亡時までの全ての戸籍謄本
・相続人全員の戸籍謄本(戸籍抄本も可)
・相続人全員の住民票(戸籍の附票も可)

法務局では法定相続人の構成別に、相続関係説明図の記載例を公開しています。以下にその一例をご紹介します。

・引用:『主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例』

相続登記の必要書類の取り扱いで注意する点は?

相続登記の書類を取り扱っていくうちに「こんなに大変だとは思わなかった」と、嘆く人も多いのではないでしょうか。相続登記の必要書類を取り扱う際に、注意すべき点について以下にご紹介します。

必要な書類は全てそろえよう

指定されている書類は、全てそろえましょう。特に、被相続人が誕生してから亡くなるまでの一連の戸籍を収集する際には、漏れがないように注意します。例えば、生前に被相続人が本籍地を変えた場合は、複数の市町村役場から取り寄せる必要があります。

未登記の不動産を相続した場合は必要書類が増える

不動産の中には、複数の代にわたり相続登記をしていないケースがあります。その場合は、未登記だった所有者の相続登記も必要です。どういうことかと言いますと、例えば父から引き継いだ不動産が未登記であり、不動産の所有者が亡くなった祖母のままであることがわかりました。その場合、父が所有者となったことに対する相続登記と、子が相続したことによる相続登記の両方の手続きをする人があります。未登記の不動産を相続する場合は通常よりも必要書類が増えることが予想されますので、混乱しないように注意しましょう。

不動産の名義人が被相続人と異なる場合も必要書類が増える

不動産の名義人が被相続人ではなく他人の名前だったということがあります。
そのパターンとして、以下の2つが考えられます。
・親の上の代(祖父母や曽祖父母など)の名義のままである
・全く知らない他人の名義になっている

いずれにしましても、名義が異なる場合は相続人全員から承諾を得て名義変更をする必要があります。相続人全員に連絡をとったり、必要な戸籍を取得したりするなど通常の手続きよりも時間と手間がかかるでしょう。

遠方の場合は手間がかかりやすい

登記申請は、オンラインでもできるようになりました。遠方に住んでいても、オンラインを使えば郵送で書類を取り寄せられるでしょう。けれども郵送での申請は時間がかかりやすく、作業が長引いてしまいます。例えば窓口だったらミスを指摘されてすぐに対応できますが、郵送ではそれができないため、ミスを指摘されてから修正するまでに時間がかかるでしょう。遠方の場合は、郵送申請一択になりがちです。できるだけ早く手続きを終わらせたい場合は、専門家に依頼するのが賢明でしょう。

司法書士 飯田 真司

<strong>飯田 真司</strong>

信託相続先生の司法書士飯田真司と申します。大学在学中はお笑い芸人を目指していたものの、挫折し、司法書士の道へと方向転換致しました。司法書士として頑張りつつも、たまに漫才イベントを企画しています。

専門分野・得意分野
家族信託、相続関連
資格
  • 司法書士(法人登録番号:11-00552、登録番号:6918)
  • 簡裁代理(認定番号:1401068)
所属団体名
東京司法書士会
所属事務所
司法書士法人クラフトライフ
所属事務所の所在地
東京都世田谷区用賀4丁目28番21号

活動実績・専門分野

財産の管理・承継に関するリスクマネジメントとその手続きを専門分野とする。司法書士の専門である法務だけでなく、税務、財産活用等多角的な視点による提案力が強み。大手保険代理店、医療法人、社会福祉協議会等、セミナーや勉強会実績多数。

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