相続税とは?税理士がわかりやすく簡単に解説!
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相続登記という点だけ切り取ると、手続きをしてしまえば終わりと簡単に考えられます。けれども、どうしてよいかわからずに、持て余している土地であったり、遺産分割をめぐって遺産分割協議が思うように進まなかったりするなど、難航するケースもあるでしょう。相続登記の手続きや不要土地の国庫帰属に関する悩みなどは、専門家に相談して早期解決を目指すのが無難です。
相続税とは?税理士がわかりやすく簡単に解説!
相続税とは?
相続税とは、遺産を引き継いだ時に発生する税金のことです。相続税の計算は、引き継いだ全ての遺産に税率をかければよいと考えるかもしれませんが、実際はそれほど単純なものではありません。計算式が複雑なうえ、引き継ぐ財産や利用する税制特例などによっても税額が変わりますし、場合によっては税金が発生しないこともあるのです。もし、自力で相続税の計算や節税を考えているのなら、相続税の仕組みや特徴を掴んでおくのが賢明でしょう。
本記事では相続税の基本情報から節税対策と注意点についてわかりやすく解説します。
相続税に関する基本情報
相続税は、多くの人にとって身近な税金の一つです。けれども、相続という特別なイベントに発生する税金であるため、具体的な計算方法や贈与税との違いなどよく分からない点も多いのではないでしょうか。「相続税を理解するのにこれだけは知っておきたいこと」をご紹介します。
相続税は「課税遺産総額」にかかる税金
課税遺産総額とは、相続する財産全体から必要なものを控除して残った金額のことを指します。例えば、遺産を遺して父が亡くなったとしましょう。この中には、プラスの財産とマイナスの財産とがあります。さらに、死亡保険金や過去3年または7年以内に贈与した財産など課税対象となるもの(加算項目)や、葬儀代や死亡保険金の非課税枠など非課税となるもの(減算項目)がありますが、これらをプラス/マイナス財産にそれぞれ加えて差し引きしたのが課税価格です。
父が総額1億円の遺産と、借入金1,000万円を遺して亡くなったとしましょう。その場合の課税価格は、9,000万円です。
1億円-1,000万円=9,000万円
相続税にはさらに基礎控除が設けられています。そして、1億円の遺産を相続する人が4人いた場合の基礎控除額は、以下のように計算されます。
・基礎控除額の算式:3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
・基礎控除額の計算:3,000万円+2,400万円=5,400万円
価格課税から基礎控除額を差し引いたのが課税遺産総額で、ここに相続税がかかります。
9,000万円-5,400万円=3,600万円(課税遺産総額)
相続税と贈与税との違い
相続税と贈与税との違いを簡単に言いますと、前者は被相続人が亡くなった時の財産に対してかかる税金で、後者は被相続人が生前に財産を贈与した際に発生する税金です。相続税は相続財産全体が対象ですが、贈与税は贈与した財産のみにかかります。
一般的に、贈与税の方が相続税よりも高い傾向にあります。ただし、これはケース・バイ・ケースで、場合によっては贈与税の方が安くなることもあるのです。
先ほどの例では、9,000万円の遺産総額に対する相続税は、ざっと計算しただけでも360万円です。仮に暦年贈与(年間110万円以下までなら贈与税がゼロ円になる制度)を利用して、1人ずつ年間100万円を22年間贈与し続けた場合はどうでしょうか。暦年贈与は受贈者1人につき年間110万円まで非課税となりますので、毎年税金はかかりません。
400万円×22年=8,800万円
被相続人が亡くなった時点で残った財産が200万円であれば、相続税もかからないでしょう。極端な例かもしれませんが、節税を考える場合は相続税と贈与税について理解を深め個人の事情に合わせてシミュレーションすることが大切です。
相続税は自分で簡単に計算できる?
簡単かどうかは、相続する財産の内容や相続人などによって異なりますが、自分で相続税を計算することは可能です。また、相続税の計算には手順がありますので、それを覚えれば自分でも相続税を算出できるでしょう。
詳しい計算方法については、こちらをご参考ください。
⇒『自分の相続税の税率はどれくらい?計算式と流れを解説!』
相続税を自分で計算する際に留意するのは、税務調査の対象になりやすいということです。相続税の計算は、複雑になる傾向にあるといわれています。それを素人が計算したものをベースに相続税申告をした場合、税務署は計算ミスや申告漏れを疑いやすいのです。税務調査が入ると財産や相続内容について厳しく追及されます。仮に記入漏れなどが見つかった場合は、たとえ「純粋に知らなかった」としても、追徴課税が課される可能性が高くなります。相続が複雑になる場合は、税理士などの専門家に依頼するのが無難でしょう。
自分で計算が難しいケースには何がある?
自分で計算が難しいケースには、財産評価が難しい財産を相続する場合でしょう。
その典型的な例が、土地の評価です。
土地の評価には、「路線価方式」と「倍率方式」の2種類があります。両者の計算式はシンプルなうえ必要な情報も自分で収集しやすいのですが、「良い形をした土地」というのは珍しく、実際の土地には形状に差があります。形状によって利便性が損なわれることを想定し、土地の評価では補正率を適用させて修正します。この場合、土地の評価をする前に補正率を計算する必要があるのですが、その土地をどのように補正するのか(補正には、間口や奥行きなど考慮する点が複数あります)という判断は、専門家によっても解釈が異なるほど複雑です。
評価が難しいケースとしてもう一つ挙げられるのが、自社株評価です。自社株評価とは簡単に言うと非上場株式を評価することで、相続した自社株に対して相続税が発生します。自社株評価では、その計算式もさることながら、株主を明確にして細かな条件と照らし合わせながら会社の規模を確定したうえで複数ある計算式の中から最適なものを選ぶなど、計算するプロセスから複雑です。税理士でも理解するのが難しい点があるほど難易度の高い計算ですので、自社株評価を相続する場合も、その道に詳しい専門家に計算を依頼するのが望ましいでしょう。
相続税が発生するのはどんな時?
相続税が発生する時と、そうでないケースについてそれぞれ解説します。
相続税が発生するケース
相続税が発生するケースには、以下のものがあります。
・相続する遺産が基礎控除額を上回る場合
・相続時精算課税制度を利用した場合
・みなし財産がある場合
①相続する遺産が基礎控除額を上回る場合
課税遺産総額が基礎控除額よりも大きい場合は、差額分に対して相続税が発生します。例えば、課税対象となる遺産が5,000万円あり、それを配偶者と子1人で分割する場合の基礎控除額は4,200万円。5,000万円から基礎控除額を差し引いた差額の800万円に相続税がかかります。
5,000万円(課税価格)-4,200万円(基礎控除額)=800万円
②相続時精算課税制度を利用した場合
相続時精算課税制度とは、贈与された財産にかかる税金を贈与時ではなく相続時に加味して計算する制度のことです。相続時精算課税制度を利用すると、贈与された財産が2,500万円以下の場合は無税となり、相続時に相続財産に加算されます。この合計額が相続税の基礎控除よりも下回れば相続は発生しませんが、上回った場合はその分に対して相続税がかかります。
例えば、父から生前に2,000万円の不動産を贈与されたとします。相続時精算課税制度を利用していたため、贈与税はかかりません。その後父が3,000万円の財産を遺して亡くなり、母と2人で相続することになりました。
・遺産の総額:3,000万円+贈与された2,000万円=5,000万円
・基礎控除額:3,000万円+600万円×2人=4,200万円
・課税遺産総額:5,000万円-4,200万円=800万円
このケースでは、800万円に対して相続税がかかります。
③みなし財産がある場合
みなし財産とは簡単に言うと、被相続人が亡くなったことをきっかけに発生する財産のことです。例えば死亡保険金は生前には存在せず相続財産には入りません。けれども、「被相続人が亡くなった時点で得られる財産」とみなされるため、相続税の課税対象となります。
相続税が発生しないケース
相続税が発生しない主なケースとして、以下の3つが挙げられます。
・相続人が配偶者のみ
・相続する遺産が基礎控除額を下回る場合
・障害者控除額が相続税を上回る場合
①相続人が配偶者のみ
被相続人の遺産を相続する人が配偶者1人の場合は、配偶者控除を適用することによって相続税がゼロになります。配偶者控除は、配偶者が受け取る遺産に対して1億6,000万円まで、もしくは法定相続分のどちらかが高額になる方と同額であれば、相続税はかからない制度です。配偶者のみの相続の場合、配偶者の法定相続分は1。つまり、全額を相続しても配偶者控除によって相続税は発生しません。
②相続する遺産が基礎控除額を下回る場合
相続税には、基礎控除額が設定されていて、遺産額がそれを下回る場合は相続税がかからないという決まりがあります。基礎控除額の算式は、「3,000万円×(600万円×法定相続人の数)」。例えば、法定相続人が2人の場合の基礎控除額は、3,000万円+1,200万円=4,200万円です。つまり、4,200万円以下の遺産であれば、相続税は発生しません。
③障害者控除額が相続税を上回る場合
障害者控除とは、障害を持つ法定相続人に対する制度のことです。一般障害者または特別障害者に認定されていて、かつ相続した時の年齢が85歳未満であれば、障害者控除が適用されます。例えば35歳の相続人(一般障害者)の控除額は、以下のとおりです。
(85歳-35歳)×10万円=500万円
もし、この相続人の相続税が200万円だった場合は、控除額の方が大きいためゼロ円になります。
相続税が発生しなくても相続税申告する場合がある
多くの人が勘違いしやすいのが、「相続税が発生しなかった場合は、相続税申告は必要ない」ということです。中には相続が発生しなくても申告が必要なものがあります。例えば、配偶者控除。配偶者控除を利用すると、相続税がゼロになることも多いのですが、制度を利用する要件に相続税申告が挙げられていますので、忘れずに申告しましょう。
相続する前にできる節税対策
相続税をできるだけ抑えたいのなら、相続をする前から節税対策に取り組むのがベストです。具体的な節税対策を以下にご紹介します。
贈与税の負担を避けた方法で贈与する
相続時の遺産額を下げることは、相続税を抑えるポイントの一つです。遺産額額を下げるには、財産を子や孫などに贈与することが賢明ですが、贈与税には気をつける必要があります。
贈与税は、被相続人が生前に贈与した財産に対してかかる税金です。贈与した財産が高額になるほど税率は上がり、3,000万円以上になるとかける税率は55%になります。
・引用:『No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)』
ただし、贈与税を抑えられる制度を利用することによって、贈与税と相続税を軽減できます。
贈与税を抑える特例として挙げられるのが、
①相続時精算課税制度
②暦年課税制度
の2つです。
①相続時精算課税制度
相続時精算課税制度は、生前受け取った財産にかかる税金は贈与時ではなく、相続時に相続税として支払う制度です。通常贈与税の控除額は年間100万円以下ですが、相続時精算課税制度を利用すると、2,500万円+年間110万円以下が非課税となります。遺産の総額が基礎控除額を下回った場合の相続税は、0円です。
②暦年課税制度
暦年課税制度とは、年間110万円以下の財産は非課税となる制度のことです。
①と比べると控除される額は低いと感じるかもしれませんが、時間をかければかけるほど節税できる額は大きくなります。また、この非課税枠は贈与する人1人につき年間110万円ですので、贈与する子や孫が多い場合も、節税効果を感じられるでしょう。注意点としては、贈与者が亡くなる前の3年以内(2024年1月1日からは7年以内)の贈与分は、相続財産として相続税の計算に加味される点です。
非課税枠を利用して納税資金を確保する
相続税には利用する特例によって、非課税枠が設けられているものがあります。非課税とされた分を納税資金にすることで、相続税対策につなげることが可能です。
例えば、生命保険には「500万円×法定相続人の数」という非課税枠があります。非課税枠内でおさまるような生命保険に加入すれば、税金を差し引かれることなくお金を遺せるでしょう。また、生命保険の非課税枠は、500万円以上と高額になるため、まとまったお金を納税資金として確保するのに適しています。ただし、生命保険の非課税枠を利用するには、被相続人が自分で保険料を支払っていることと、受取人が相続人であることが前提です。
特例を利用して財産の評価額を下げる
相続税の計算は、財産評価をもとにしています。そのため、評価額が高くなればなるほど相続税も高くなります。特例を利用して評価額を下げることで、減税につなげられます。小規模宅地の特例は、要件を満たした宅地に対して最大80%の減額できる制度です。例えば、通常の計算で5,000万円と評価された宅地でも、小規模宅地の特例を適用することによって1,000万円の評価額に抑えることが可能となるのです。
ただし、小規模宅地の特例には、「被相続人と同居していた家族のみが申請者として認められる」「相続時精算課税制度との併用はできない」などの制限がある点には留意しましょう。
なお、小規模宅地等の特例の計算例については、別記事に書きましたのでそちらをご参考ください。
⇒『相続税の早見表の見方と注意点』
気をつけよう! 節税対策のこんな落とし穴
節税対策のつもりが、結果的に多額の税金を支払うことになってしまった。
そんなケースは珍しくありません。実は節税対策には落とし穴があるのです。主な事例を挙げてみましょう。
暦年課税:非課税だと思っていたのに結果的に課税されてしまった
暦年課税は、年間110万円以下であれば課税されることはありません。また、「贈与者が亡くなってから7年以内に贈与した110万円以下の財産」に該当することがない場合も、非課税です。ただしここで注意しなければならないのは、毎年のように贈与する点です。もし、受贈者と贈与者との間で「1,000万円を贈与するために、毎年100万円ずつ支払う」といった約束(定期金給付契約)を交わしている場合は、課税の対象となります。
例えば、2,000万円を定期贈与とみなされた場合は、2,000万円に対して贈与税が課せられます。
相続時精算課税制度:ルールを忘れると追徴課税されることもある
◯設例:
父Cは子Dに、相続精算課税制度を利用して生前2,000万円の土地を贈与した。父Cから「相続時精算課税制度を使って贈与したものだから、税金のことは心配ない」と言われていた子Dは、贈与後は何もしなかった。ところが、父Cが亡くなった後に、税務署から「贈与された土地に対する贈与税の支払い」を指摘されてしまう。
相続時精算課税制度を利用した場合、贈与を受けたことを申告する必要があります。そして、その申告をするのは贈与を受けた人です(設例では子D)。子Dは申告をしなかったため相続時精算課税制度は適用されず、贈与された土地に対して贈与税がかかります。
・課税価格の計算:2,000万円-110万円(基礎控除額)=1,890万円
・贈与税の計算:1,890万円×50%(税率)-250万円(控除額)※=695万円
※国税庁の贈与税の速算表を参照
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