相続放棄とは?司法書士がわかりやすく簡単に説明致します!

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相続対策に気を取られて忘れがちとなるのが、認知症や事故、病気等に伴う資産凍結問題です。資産が凍結してしまえば、相続税対策の実行が中途で終わってしまったり、生活に支障を及ぼしたりと大きな問題となり得ますので、相続だけでなく、資産凍結対策の検討も重要となります。
相続放棄とは?司法書士がわかりやすく簡単に説明致します!

相続放棄とは。わかりやすく簡単に解説!

相続放棄とは簡単に言うと、相続による権利や義務を放棄する制度のことです。これは相続人に与えられている権利で、相続放棄をすることで、相続人ではなかったこととなり、故人が遺した借金の返済を避けられるなどのメリットがあります。

相続放棄をするかしないかはっきりしていない場合でも、相続放棄とはどのような制度で、利用するとどうなるのかといったことを事前に知っておくと、相続が発生した時に選択肢が広がるでしょう。
本記事では、相続放棄の基礎知識から手続き方法、注意点までわかりやすく解説します。

相続放棄について、簡単に知っておこう!

相続放棄はその言葉から、なんとなく意味はわかるかもしれません。けれども、具体的にどのような制度なのだろうかと疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。相続放棄についてその概要を簡単に見てみましょう。

相続財産にはマイナスの財産が含まれる

相続人が引き継ぐ財産には、プラスの財産(預貯金や不動産など)とマイナスの財産(借金など)とがあります。マイナスの遺産を相続すると、故人(被相続人)の代わりに返済する義務が生じます。

わかりやすい例を挙げましょう。父親が資産をほとんど残さず1億円の負債を抱えたまま亡くなった場合、相続人となった子や配偶者には1億円を返済する義務が生じます。けれども、相続放棄を選択することによって、返済を逃れることが可能になるのです。

相続人は、自分の意志で放棄するかどうかを決められます。相続人が複数いる場合でも、自分だけが相続放棄をして問題ありません。

相続放棄をするとどうなるか

相続放棄をすると、相続財産を、相続する権利を失います。つまり、負債だけでなく本来引き継ぐはずの資産も受け取れないということです。ただ、あくまで、相続財産が対象ですので、相続放棄をしたとしても、法律上は相続財産とされない、生命保険による死亡保険金などは受け取れます。
相続放棄をすると、借金や遺産分割協議に参加するわずらわしさから解放されますが、財産管理の義務は残る点に注意しましょう。財産管理については、後述します。

相続放棄が出来る期間

相続放棄には期限があり(これを「熟慮期間」と言います)、期限内に申立て手続きを終わらせる必要があります。相続放棄ができる期間は、「被相続人の死亡の事実を知り、かつ、自分が相続人であることを知った日から3か月以内」です。
期間内に手続きの準備をして相続放棄の申立てをし、家庭裁判所から相続放棄を認めてもらうことで手続きは終わります。

相続放棄の期間延長

原則として、相続放棄の期間延長は不可です。ただし、相続放棄の判断に必要とされる資料が得られないなど正当な理由がある場合は、期間の延長が認められることがあります。
例えば、被相続人の財産調査に時間がかかり、どの程度の負債を抱えているのかが分からないまま3か月が経過すると予測されるケースなどです。期間を延長する場合は、相続放棄の期限が終わる前に家庭裁判所に、「熟慮期間の伸長」の申立てを行います。

3カ月経過後の相続放棄

熟慮期間である3か月を経過すると、相続することを承認したものとみなされ、原則として、相続放棄は出来なくなります。例外的に、熟慮期間内に発覚しなかった借金が、熟慮期間経過後に、請求書が送られてきたことによって発覚した等、相続放棄の意思決定をするための材料が熟慮期間経過後に発覚したことにつき、当人の落ち度によるものではないような事情があれば、熟慮期間経過後であっても、相続放棄が認められる可能性はあります。
なお、熟慮期間は、先に解説致しました通り、相続発生の事実と、自身が相続人である事実の二つを知ったときから起算します。そのため、相続開始から3カ月以上が経過していたとしても、熟慮期間が経過したと言い切れるわけではなく、熟慮期間の起算点が、相続発生日から随分後であったということの疎明資料を提出することで、熟慮期間内の相続放棄の取り扱いで申立てをすることもあります。

相続放棄の手続きをわかりやすく解説!

相続放棄をするには、必要な書類をそろえて家庭裁判所に提出する必要があります。
役所における手続きでは、記入漏れや書類の不足などによって受理してもらえないことも多々ありますが、手続きの手順や必要書類の書き方を事前に確認しておくことでミスを減らせるでしょう。手続きについて簡単に理解できるように、時系列で解説します。

相続放棄手続きの流れ

相続放棄の手続きは、以下のような手順で進められます。
①相続放棄に必要な書類を準備する
②相続放棄に必要な費用を準備する
③家庭裁判所に書類を提出する
④照会書が届いた場合は返信する
⑤相続放棄申述受理書を受け取る(相続放棄が認められた場合)

準備に必要なのは、提出が求められている書類と手続きに必要な費用。必要書類に記入をして家庭裁判所に提出し、あとは結果を待つだけです。
次の章から、各項目について詳しく解説します。

①相続放棄に必要な書類を準備する

相続放棄に必要な書類には、必須のものと被相続人との続柄別に準備するものとの2種類があります。
以下、必須書類と続柄別必要書類に分けた一覧です。なお、戸籍、原戸籍、除籍を分けずに、「戸籍等」と表記しています。また、「戸籍等」は、いずれも、抄本ではなく、謄本とお考え下さい。抄本で問題ないものもあるのですが、より簡単にするためです。
◯必須書類【共通】
書類名
入手先

1.相続放棄申述書
各家庭裁判所またはこちらよりダウンロード可

2.故人の住民票除票(又は戸籍附票)
故人の最終居住地の市町村役場。戸籍附票は、本籍地のある市町村役場

3.申述人(放棄する方)の戸籍謄本
本籍地のある市町村役場

◯必要書類【続柄別】
相続放棄をする人の、
被相続人からみた続柄
書類名
入手先

妻又は夫
■被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
本籍地がある
市町村役場

子又はその代襲者(孫,ひ孫等)(第一順位相続人)
■被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
■申述人が代襲相続人(孫,ひ孫等)の場合,被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

父母・祖父母等(直系尊属)(第二順位相続人)の場合(先順位相続人等から提出済みのものは添付不要)
■被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
■被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
■被相続人の直系尊属に死亡している方(相続人より下の代の直系尊属に限る(例:相続人が祖母の場合,父母))がいらっしゃる場合,その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

兄弟姉妹及びその代襲者(おいめい)(第三順位相続人)の場合(先順位相続人等から提出済みのものは添付不要)
■被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
■被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
■被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
■申述人が代襲相続人(おい,めい)の場合,被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

②相続放棄に必要な費用を準備する

相続放棄において必ず発生する費用には、以下のものがあります。
・収入印紙代:800円
・戸籍謄本取得代:450円
・除籍、原戸籍謄本取得代:1通につき750円
・被相続人の住民票除票取得代:約300円
・郵便切手:82円5枚,10円5枚
必要とする戸籍謄本の数や、家庭裁判所が定めている郵便代などによって費用にはばらつきがありますが、4,000円前後を見ておくとよいでしょう。

③家庭裁判所に書類を提出する

相続放棄の手続きを行うのは、故人の最後の居住地を管轄している家庭裁判所です。
該当する家庭裁判所は、こちらで調べられます。

相続放棄の申立て方法は、各家庭裁判所の窓口または郵送のいずれかです。窓口で申請する場合は、手続き前に該当する家庭裁判所の開庁時間を確認しましょう。原則として申立人が書類を提出しますが、申立人が未成年の場合は、法定代理人が申立てを行います。

④照会書が届いた場合は返信する

書類を提出した後、裁判所から照会書が届くことがあります。これは、申立内容に関する質問状のことで、相続放棄をした経緯などを確認することが目的です。受け取った場合は期限までに回答・返信しましょう。

⑤相続放棄申述受理書を受け取る(相続放棄が認められた場合)

相続放棄が認められると、家庭裁判所から「相続放棄申述受理書」が届きます。放棄申述受理書を受け取るのは、申立てを行ってから2週間以内です(照会書が届いた場合は、もう少し時間がかかります)。

相続放棄申述受理書を受け取ったら相続放棄の手続きは終わりますが、「相続放棄申述受理証明書」の交付手続きをすることをおすすめします。相続申述受理証明書は、家庭裁判所から相続放棄を認められたことを証明する書類です。例えば、債権者から被相続人の借金を返済するように迫られた時に、証明書を提示することによって借金を返済する義務がないことを相手に証明できます。このように、何かあった時に役に立ちますので、取得しておくとよいでしょう。

相続放棄の注意点

相続放棄の手続きにおいては、うっかりミスが取り返しのつかないことに発展するおそれがあります。些細なミスで相続放棄ができなくなったということを避けるためにも、以下の点に注意しましょう。

相続放棄が適切かの判断

相続放棄をする前に、必ず相続放棄することがベストなのかどうかを自問自答しましょう。1度相続放棄をしてしまうと、取り消すことができないからです。誤った判断を避けるには、故人が遺した財産を評価し、プラスとマイナスのバランスを見ることが大切です。もし、マイナスがプラスを大きく上回る場合は、相続放棄を検討するとよいでしょう。

相続財産に手を付けてはいけない

相続放棄を視野に入れているのなら、故人の遺産には絶対に手を付けないようにしましょう。手を付けた財産の内容によっては、相続放棄が認められないことがあるからです。被相続人が遺した遺品から貴金属など価値のあるものを持ち出した場合、遺産を相続する意志があるとみなされます。被相続人が晩年住んでいたアパートの解約や、滞納家賃の支払いをすることも、相続放棄を予定している場合は控えた方がよいでしょう。

法律上相続する意志があるとみなされた場合(単純承認)は、撤回できません。たとえ価値がないと考えられるものでも、単純承認と解釈されるおそれがあります。一切手を付けないことが賢明でしょう。

次順位相続人への連絡

相続放棄をした時に気になるのは、他の相続人に伝えるべきかどうかということではないでしょうか。次順位相続人への連絡は義務ではありませんが、次順位相続人との関係に影響を与える可能性がある点には留意しましょう。

例えばあなたが第1順位の相続人で、相続放棄をしたことによって相続の権利が第2順位に移行したとします。もし、遺産の中に借金や滞納した税金などがあると、債権者から第2順位の相続人に督促状が届くようになります。もし知らせていなければ、督促状を受け取った相続人は戸惑うでしょう。場合によっては「なぜ言わなかった」と、気分を害するかもしれません。

次順位相続人の熟考期間は、相続の権利が移行したのを知った日から3か月となるため、不利益なことはほとんど生じないと考えられます。次順位相続人とはあまり面識がなく、疎遠に近い状態であれば伝えなくてもよいですが、近い関係である場合は相続放棄したことを伝えるのが賢明でしょう。

相続放棄後の財産管理

相続放棄をしたら、一切の財産と無関係になると考えるかもしれません。しかし、相続放棄した人には、財産を管理する義務が残っています。

民法940条1項
“相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。”
・引用:e-gov法令検索

わかりやすく言いますと、財産を管理する人がいなければ、たとえ相続放棄をしたとしても、その相続人は相続財産管理人が選ばれるまで財産を管理する義務を負うということです。財産を管理する義務については、義務の範囲をめぐり議論の余地はあるのですが、遺産を放棄したからと言って全責任から解放されたわけではないという点には留意しましょう。

相続放棄の手続きは専門家に任せると簡単!

相続放棄の手続きは自力ですることも可能ですが、まとまった時間と労力が必要です。専門家に任せることによって手続きの負担が軽減され、精神的・時間的に楽になるでしょう。

手間が掛からず安心

相続放棄の手続きをするには、必要な戸籍や書類を集めて記入するという作業があります。
例えばあなたが次順位相続人で相続放棄をする場合、先順位が申立てた時に発行された事件番号を記載することで、戸籍謄本等の再提出が不要となります。しかし、先順位とは疎遠で相続放棄をしたとの連絡もないような場合は、最初から手続きを進めなければならないでしょう。

必要な戸籍を全て集める作業は、ケースによっては難易度が高くなります。例えば被相続人が生存中に本籍を変更したり、離婚と再婚を繰り返したりした場合、集める戸籍の数と確認作業が通常よりも増えてしまいます。これらの作業を専門家に代行してもらうことによって、精神的・時間的に余裕ができるでしょう。

熟慮期間経過後も対応してくれる

熟慮期間が過ぎた後に相続放棄できる可能性はゼロではありません。しかし、熟慮期間が経過した正当な理由を家庭裁判所に伝える必要があり、一般の人にとって難易度はかなり高いと言ってよいでしょう。熟慮期間経過後の相続放棄の手続きについて経験が豊富な専門家であれば、適切に対応してくれることが期待できます。

次順位相続人の相続放棄も対応してくれる

先順相続人から次順位相続人に相続する権利が移り、次順位相続人が相続放棄をするかどうかを検討するケースにも、専門家は対応します。相続することを予期していなければ、故人が遺した財産の評価から作業を進める必要があるでしょう。財産評価は、時間と専門知識を要します。また、次順位相続人は先順位相続人全員の戸籍を準備する必要があるため、準備の段階から大きな負担になりがちです。

専門家は、財産を正確に評価したうえで依頼人に相続放棄の適否に関するアドバイスをします。そして、最終的に相続放棄を決めた場合は、相続放棄の申立てという手間のかかる作業も代行してくれるでしょう。

相続放棄の専門家費用相場

相続放棄を依頼できる専門家は、司法書士か弁護士となります。費用相場は概ね5~10万円ほどです。実際にかかる費用についてはばらつきがありますので、依頼先の料金形態を確認することが大切です。

司法書士 飯田 真司

<strong>飯田 真司</strong>

信託相続先生の司法書士飯田真司と申します。大学在学中はお笑い芸人を目指していたものの、挫折し、司法書士の道へと方向転換致しました。司法書士として頑張りつつも、たまに漫才イベントを企画しています。

専門分野・得意分野
家族信託、相続関連
資格
  • 司法書士(法人登録番号:11-00552、登録番号:6918)
  • 簡裁代理(認定番号:1401068)
所属団体名
東京司法書士会
所属事務所
司法書士法人クラフトライフ
所属事務所の所在地
東京都世田谷区用賀4丁目28番21号

活動実績・専門分野

財産の管理・承継に関するリスクマネジメントとその手続きを専門分野とする。司法書士の専門である法務だけでなく、税務、財産活用等多角的な視点による提案力が強み。大手保険代理店、医療法人、社会福祉協議会等、セミナーや勉強会実績多数。

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私たちは、司法書士と税理士を中心とする、相続や家族信託のプロフェッショナルです。「何をすればいいか分からない」といった段階からご相談頂けますので、お気軽にご相談下さい。

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