相続税計算における生命保険控除をわかりやすく簡単に解説!

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相続税計算における生命保険控除をわかりやすく簡単に解説!

生命保険控除とは

生命保険控除というと、支払った保険料に応じて所得税から一定の金額を控除することをイメージする方も多いのではないでしょうか。相続税における生命保険控除とは、被相続人が生前加盟していた生命保険に対して設けられている、非課税枠のことです。ただし、全ての生命保険に適用されるのではなく、その種類や契約内容によって異なります。

「生命保険控除は誰でも受けられるの?」「生命保険を含む相続税はどのように計算したらいいの?」「生命保険で相続税対策はできる?」など、疑問は尽きないでしょう。
そこで本記事では、生命保険控除の基本情報から生命保険控除を含む相続税の計算、さらに生命保険控除を活用した相続税対策まで、わかりやすく説明します。

生命保険と相続税

生命保険は、被保険者にもしものことがあった場合に、まとまったお金を家族に残すことを目的とした保険です。「自分の身に何かあったら家族が困るから」と、故人が生命保険をかけているケースも珍しくはありません。生命保険にはいくつか種類がありますが、相続税に関係しているのは以下の3種類です。
・死亡保険金
・満期保険金(学資保険など)
・個人年金保険
ここでは、被保険者が亡くなった時に支払われる死亡保険金と、相続税との関係について解説します。

生命保険に相続税がかかるのはなぜ?

死亡保険金とは、被保険者が亡くなった時に、受取人に対して支払われる保険金のことです。死亡保険金は、故人が生前所有していた財産と異なるため、民法上では相続財産とはみなされてはいません。「それならなぜ相続税がかかるのか」と疑問に思うかもしれませんが、死亡保険金は被保険者(被相続人)が亡くなったことをきっかけに発生し、相続人が受け取ります。このことから、税法上では死亡保険金を「みなし財産」とし、相続税の課税対象としています。

みなし財産には、死亡保険金の他に以下の種類があります。
・死亡退職金
・功労金
・死亡前7年以内※に贈与した財産
など。
※2024年1月1日以前は、3年以内でした。延長された4年間の贈与は、総額100万円まで非課税です。

相続向けの生命保険の種類

死亡保険金を受け取ることのできる生命保険には、以下の種類があります。
・定期保険
・養老保険
・終身保険(一生涯保障)

この中で特に相続対策に向いているのが、終身保険です。定期保険と養老保険には保険期間が決まっていますが、終身保険には終わりがなく、相続時にまとまったお金が必ず入ります。

生命保険の非課税枠と計算例

相続税の計算には、生命保険の非課税枠が設けられています。
・非課税枠の計算式:「500万円×法定相続人の数」

ここでいう法定相続人とは、民法で定められている相続人(配偶者や子、父母などの血族)のことをいいます。法定相続人が受け取る生命保険の金額が非課税枠よりも少なければ、相続税はかかりません。逆に非課税枠よりも上回る場合は、その差額分に対して相続税が発生します。

例えば、父が亡くなり母(父の配偶者)と3人の子が遺産を引き継ぐ場合の法定相続人の数は4人です。
①死亡保険金2,000万円を4人の法定相続人で引き継ぐ場合
2,000万円-(500万円×4人)=0円

②死亡保険金5,500万円を4人の法定相続人で引き継ぐ場合
5,500万円-(500万円×4人)=3,500万円
②のケースでは、3,500万円に対して相続税がかかります。

生命保険控除と基礎控除

相続税の計算には基礎控除があり、相続税は課税価格(課税対象となる財産額)から基礎控除を差し引いた額(課税遺産総額)に対してかかります。
・基礎控除の計算式:「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」
・課税遺産総額の計算式:課税価格の総額-基礎控除額

もし、課税遺産総額が基礎控除よりも少なければ相続税はゼロ円です。逆に基礎控除額よりも上回る場合は、相続税が発生します。なお、生命保険の非課税枠と基礎控除は併用可能です。

生命保険に贈与税がかかることはある?

生命保険に贈与税が課されるケースは、以下のように被保険者(保険の対象者)・受取人(保険金を受取る人)・保険契約者(保険料を支払う人)がバラバラである場合です。
・被保険者:故人
・受取人:子
・保険契約者:故人の配偶者

上記の例では、支払われる死亡保険金は配偶者から子への贈与とみなされるため、相続税ではなく贈与税が課されます。相続税が発生するのは、保険契約者である故人を被保険者とし、受取人を法定相続人にしていた場合です。

生命保険控除を入れた相続税の計算方法

以下の設例をもとに、生命保険控除を含む相続税の計算方法を解説します。
◯設例
・被相続人:父A
・相続財産:2億8,000万円(土地1億円、自宅6,000万円、預貯金4,000万円、死亡保険金8,000万円)
・相続人:子B、子C、子D、子E
・負債:なし

価格課税を計算する

子B~Eは、以下のように財産を相続しました。
・子B:土地1億円
・子C:自宅6,000万円
・子D:預貯金4,000万円
・子E:死亡保険金8,000万円

死亡保険金には、非課税枠(500万円×4人)が適用されます。
非課税枠を適用後、課税価格を合計します。
・子B:土地1億円
・子C:自宅6,000万円
・子D:預貯金4,000万円
・子E:死亡保険金8,000万円-2,000万円(非課税枠)=6,000万円

課税価格の合計:1億円+6,000万円+4,000万円+6,000万円=2億6,000万円

課税遺産総額を計算する

基礎控除額を計算し、課税価格の合計額から差し引いて課税遺産総額を算出します。
設例における法定相続人は4人で、基礎控除額は5,400万円です。これを算式に当てはめます。
2億6,000万円-5,400万円=2億600万円
課税遺産総額は、2億600万円と算出されました。ここに相続税がかかります。

各相続人にかかる相続税額を計算する

①法定相続分の計算
子B~Eにかかる相続税額を計算する前に、各人の法定相続分を計算しましょう。
・子B(1/4):2億600万円×1/4=5,150万円
・子C(1/4):2億600万円×1/4=5,150万円
・子D(1/4):2億600万円×1/4=5,150万円
・子E(1/4):2億600万円×1/4=5,150万円

②相続税の計算
続いて、相続税の速算表を参考に相続税を計算します。
・子B:5,150万円×30%-700万円=845万円
・子C:5,150万円×30%-700万円=845万円
・子D:5,150万円×30%-700万円=845万円
・子E:5,150万円×30%-700万円=845万円
相続税の合計は、3,380万円です。

③取得割合の計算
相続した財産をベースに、各人が納める相続税額を計算します。各人の取得割合は、以下のとおり。
・子B:1億円÷2億6,000万円≒0.38
・子C:6,000万円÷2億6,000万円≒0.23
・子D:4,000万円÷2億6,000万円≒0.16
・子E:6,000万円÷2億6,000万円≒0.23
※端数は小数点第2位以下で調整。

④各相続人の納税額の計算
取得割合を相続税の総額にかけた金額が、各人の納税額です。
・子B:3,380万円×0.38=1,284.4万円
・子C:3,380万円×0.23=777.4万円
・子D:3,380万円×0.16=540.8万円
・子E:3,380万円×0.23=777.4万円

子Eは、生命保険の非課税枠によって課税価格が減り、その結果納める相続税を抑えることができました。

生命保険の相続で2割加算されるケース

被相続人との続柄によって、相続税額が2割増しになる相続人がいます。これを「相続税の2割加算」と言いますが、以下の続柄以外の相続人が対象です。
・配偶者
・父母
・子
・養子
・代襲相続人(孫)

相続税の2割加算に該当する相続人の相続額は、従来の計算で得た相続税額に20%をかけて算出されます。例えば、相続税額が200万円だった場合、2割加算の相続人の相続税額は240万円です。

孫は代襲相続人(亡くなった親の代わりに遺産を引き継ぐ人)になった場合のみ2割加算が免除されます。そうでない場合は、2割加算が適用されますので注意が必要です。例えば、被相続人が自分の孫を受取人とした生命保険に加入して亡くなったとしましょう。死亡保険金は孫に支払われますが、孫の親が生存している場合は、孫に通常の相続税×20%の税金がかかります。

生命保険控除が節税対策になる4つの理由

生命保険控除が節税対策になる理由として、以下の4つが挙げられます。
・非課税枠を利用できる
・財産を渡したい人に渡せる
・遺留分や遺産分割に備えて資金確保ができる
・生前贈与を利用すると税金を抑えられる

非課税枠を利用できる

生命保険控除には、「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。財産の一部を生命保険の支払いに充てることで、非課税枠の分だけ相続税を抑えられます。

例えば、親が1億5,000万円の財産(現金)を遺して亡くなったとしましょう。
これをそのまま4人の子(相続人)で分けた場合の相続税額は、1,240万円です。
・課税遺産総額の計算:1億5,000万円-5,400万円=9,600万円
・各人の相続税額:2,400万円×15%-50万円=310万円
・相続税の合計:310万円×4人=1,240万円

今度は、1億5,000万円を現金8,000万円と生命保険7,000万円にして相続させる場合を考えてみます。
・生命保険控除の計算:7,000万円-2,000万円=5,000万円
・課税遺産総額の計算:(8,000万円+5,000万円)-5,400万円=7,600万円
・各人の相続税額:1,900万円×15%-50万円=235万円
・相続税の合計:235万円×4人=1,240万円
全て現金にするよりも、現金と生命保険にした方が相続税を抑えられます。

財産を渡したい人に渡せる

死亡保険金とは少々難しい言葉で表現しますと、「保険金受取人固有の財産」のことです。被相続人が死亡保険金の受取人を指定できるだけでなく、相続財産ではないことから、遺産分割協議で話し合って相続分を決める必要もありません。非課税枠以下の金額であれば、税金を支払うことなく受取人はまとまったお金を手にできるでしょう。

遺留分や遺産分割に備えて資金確保ができる

遺留分とは、法定相続人が最低限得ることのできる遺産の取り分のこと。法定相続分の半分が遺留分とされています。

例えば、亡くなった父の遺産を3人の子供たちで分割するとしましょう。法定相続分の1/2が遺留分ですので、相続人は各1/6ずつ遺留分を有していることになります。
亡くなった父の遺言書に「長男には1億円の不動産、2,000万円の現金を次男と三男でそれぞれ分ける」とあった場合、次男と三男の取り分は法定相続分よりも少なく、相続人の間で不平等が生じているのは明らかです。この場合次男と三男は、不足分(各1,000万円)を長男に請求できます。
・子の法定相続分:1億2,000万円
・子の遺留分:6,000万円
・子1人あたりの遺留分:2,000万円
・次男/三男の不足分:2,000万円-1,000万円=1,000万円

次男と三男から遺留分侵害額請求を受けた長男は、不動産の共有名義を避けたいと考えていますが、不動産以外に相続財産はありません。このように現物で分割するのが難しい財産を分ける一つの方法に、代償分割があります。代償分割は、現物分割に相当する金額を相続人に支払うことによって、遺産分割の不平等を解消します。分割する不動産の相当額を用意するには、まとまったお金が必要ですが、死亡保険金があればすぐに現金化でき代償分割に充てられるでしょう。

生前贈与を利用すると税金を抑えられる

全ての生命保険に有効というわけではありませんが、生前贈与による節税を前提として生命保険に加入することで、相続税を抑えられます。

生前贈与に向いている生命保険は、生存給付金を受け取るタイプです。保険契約者は被相続人(贈与者)で、受取人を受贈者にするとよいでしょう。このタイプの生命保険には、毎年生存給付金が支払われるものもあります。毎年の受取金額を控除額(年間110万円)以下にすることで、非課税で受け取り続けることが可能です。

加えて、贈与したお金を保険料の支払いに回すことで、相続税を抑えられます。例えば、被保険者が贈与者で受贈者が受取人という生命保険に加入し、贈与者は受贈者に対して110万円を贈与します。受贈者がそのお金を使って保険料の支払いをすれば、死亡保険金に対して所得税はかかるものの、相続税は回避できます。

生命保険と相続税に関する疑問にお答えします!

生命保険と相続税はともに仕組みが複雑です。ここでは、相続税における生命保険についての疑問にお答えします。

相続放棄をしたら生命保険は受け取れないの?

相続放棄をしても、受取人であれば生命保険を受け取ることは可能です。ただし、非課税枠は適用されません。非課税枠は、財産を引き継ぐ相続人に限定されているのが理由です。なお、受け取った保険金に対して相続税が発生する点には留意しましょう。

生命保険の受取人が亡くなった場合はどうなる?

生命保険の受取人が亡くなった場合は、約款をもとに新たな保険金受取人を決め、その人に保険金が支払われます(ほとんどの場合は、亡くなった受取人の法定相続人が受取人となります)。法定相続人が複数いる場合は、均等に分けられます。

リビング・ニーズ契約を使った場合の税金はどうなる?

リビング・ニーズ契約とは、被保険者が医師から6か月以内の余命宣告を受けた時に、死亡保険金から一時金が支払われる特約のことです。
被相続人が生前に使った分に対しては、税金はかかりません。けれども、使い切れなかった分については、相続税が発生します。なお、リビング・ニーズ契約で支払われた給付金には、非課税枠は適用されません。

同居人が受け取った死亡保険金に税金はかかる?

被相続人と同居していた人(事実婚のパートナー)が受け取った死亡保険金には、相続税が発生します。なお、法律婚が成立していない理由から、非課税枠は適用されません。

保険にかかる税金以前のことになりますが、同居人などの第三者を受取人に指定できない保険もあるほど、第三者を受取人にするのは難しいといわれています。仮に認めているところでも、その保険会社が設定している要件を満たす必要があります。

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税理士 粕谷幸男

粕谷幸男

一般のご家庭から医師や会社経営者まで、相続や事業承継のお悩みを、豊富な経験と知識を踏まえ「当事者目線」で親身に対応致します。

専門分野・得意分野
相続、事業承継、信託財産管理会計、税務
資格
  • 税理士(法人登録番号:1700、税理士登録番号:30268)
所属団体名
東京税理士会
所属事務所
KASUYA税理士法人
所属事務所の所在地
東京都世田谷区用賀

活動実績・専門分野

個人事業主、小規模零細事業から医師、大規模賃貸オーナーに至るまで、幅広く顧問先を抱える税理士法人代表。企業等顧問だけでなく、信託、非営利法人等の税務会計を大学講師として教鞭を執りました。個人、法人、株主等のライフサイクルに関する財産・税務のシュミレーションソフトを使用して、ご提案しています。信託財産管理会計及び税務にも精通し、家族信託や相続税事案も数多く取り扱っています。

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