兄弟による遺産相続の注意点をわかりやすく簡単に解説!

兄弟による遺産相続の注意点をわかりやすく簡単に解説!

相続人が兄弟である場合の注意点をわかりやすく簡単に解説!

故人(被相続人)の財産を兄妹姉妹で分ける遺産相続は、複雑になりがちです。遺産相続の手続きには戸籍謄本などの書類が必要ですが、兄弟姉妹が相続人になるとこうした必要書類の数が増えます。また、相続人の数も多くなるため、遺産分割の話し合いも、全員の合意には手間が掛かります。

兄弟姉妹が遺産相続の相続人になるケースには、以下のパターンがあります。
①被相続人には子がおらず兄弟姉妹が相続する
②①の状況で兄弟姉妹はすでに亡くなっており、その子(甥・姪)が相続する
③被相続人の財産を兄弟姉妹(被相続人の子)が相続する

本記事では、上記のパターン別に、遺産相続における注意点を解説します。

兄弟姉妹や甥姪が相続人である場合の遺産相続の注意点

ここでいう「兄弟姉妹」とは、被相続人と兄弟姉妹の関係にある人のことを指します。そして、甥・姪は、兄弟姉妹の子にあたります。

子がいない場合の法定相続人

子がいなかった被相続人の法定相続人になれるのは、以下に属する人です。
・配偶者(自動的に相続人となる)
・第2順位:父母や祖父母
・第3順位:兄弟姉妹、甥・姪(代襲相続人)

第2順位に属する人全員が他界するなどの理由で不在の場合は、第3順位に相続する権利が移ります。
この「兄弟姉妹」に属するのは、
・被相続人と両親を同じくする兄弟姉妹
・被相続人と片親のみを同じくする兄弟姉妹
です。

仮に兄弟姉妹の中で亡くなった人がいて、その人に子(甥・姪)がいる場合は、甥・姪が代襲相続人として遺産を相続します。

兄弟姉妹が複数おり、かつ甥と姪を巻き込む相続には、
・配偶者
・兄弟姉妹
・亡くなった兄弟姉妹の子(甥・姪)
と、3つの続柄に属する人が、それぞれ法定相続人になります。相続人(第3順位)の法定相続分は以下のとおりです。
被相続人に配偶者がいる場合
1/4

被相続人に配偶者がいない場合
1

ただし、半血の兄弟姉妹の法定相続分は、両親を同じくする兄弟姉妹の半分です。
例えば、兄Aと弟B、そして腹違いの妹Cがいたとします。兄Aが6,000万円の財産を遺して亡くなり弟Bと妹Cが相続人となりました。この時の法定相続分は次のとおりです。
・弟B(2/3):4,000万円
・妹C(1/3):2,000万円

遺産の相続人が兄弟姉妹になると、相続のパターンも複雑化します。以下4つのパターンにおける法定相続分についてご紹介します。

①配偶者+兄弟姉妹の場合
例えば、被相続人Aの遺産1億円を、被相続人Aの配偶者B、そして被相続人の兄Cの2人で分ける場合の相続分は以下のとおりです。
・配偶者B(3/4):7,500万円
・兄C(1/4):2,500万円

②兄弟姉妹のみの場合
もし、被相続人Aに配偶者がおらず、兄Cと妹Dで相続する場合は、各5,000万円ずつ引き継ぎます。

③配偶者+兄弟姉妹+甥・姪
姪と甥は、彼らの親(被相続人の兄弟姉妹)の法定相続分をそのまま引き継ぎます。
例えば、被相続人Aの遺産を配偶者Bと兄C、すでに他界している弟Eの2人の子(甥Fと姪G)の4人で分割する場合の法定相続分は、以下のとおりです。
・配偶者B(3/4):7,500万円
・兄C(1/8):1,250万円
・甥Fと姪G(各1/16):各625万円ずつ

④兄弟姉妹+甥・姪
被相続人Aは、姉H、兄C、妹D、弟Eの5人兄妹でしたが、弟Eは被相続人Aが亡くなる前に、すでにこの世を去っていました。そのため、弟Eの相続分は、2人の子(甥Fと姪G)に引き継がれます。各相続人の法定相続分を見てみましょう。
・姉H(1/4):2,500万円
・兄C(1/4):2,500万円
・妹D(1/4):2,500万円
・甥Fと姪G(各1/8):各1,250万円ずつ

不動産を異なる世帯で共有状態にするのは危険

兄弟姉妹(甥・姪も含む)の遺産相続で注意するのは、不動産を共有状態にすることです。相続人にはそれぞれ事情があり、所有した不動産の扱い方について異なる要望を持っていることも少なくありません。例えば、被相続人が住んでいた家を、近所に住んでいる弟と、遠方に住んでいる妹が相続した場合。弟は今住んでいるアパートを引き払ってその家に住みたいと思うかもしれませんし、遠方に住んでいる妹はその家を売って現金を手にしたいと考えているかもしれません。そうすると、不動産をめぐって言い争いに発展する可能性が高くなり、遺産分割協議が長引きます。特に、兄弟姉妹に加えて甥や姪も相続人となり、不動産の分割を話し合う場合は、その傾向がより強まるでしょう。

兄弟姉妹や甥姪が相続人のときは換価分割か代償分割を検討

被相続人の財産が不動産以外にほとんどなく、相続人同士で公平に分割しなければならないという場合は、換価分割か代償分割を検討しましょう。
・換価分割:不動産など現物分割が難しい財産を売却し、得たお金を相続人で分割する方法
・代償分割:相続人の中の1人が財産を引き継ぎ、残りの相続人に対して代償金を支払って遺産分割する方法

要は、財産は共有せずに別々にして各個人が所有するのが一番よいということです。現金にすることでより公平に遺産を分けることができますし、相続分に相当するお金を支払えば、「不公平な分割」という問題が解消され不動産をめぐるトラブルを回避できるでしょう。

相続人が複数いる子(兄弟姉妹)である場合の注意点

被相続人に複数の子がいる場合、兄弟姉妹で親の遺産を分割することになります。
子が一人であれば、相続もそれほど難しくないでしょう。けれども兄弟姉妹の数が増えれば増えるほど複雑となり、負担がかかりがちです。親の遺産を兄弟姉妹で引き継ぐ際の注意点について以下に解説します。

子の相続分は子の人数によって異なる

子の相続分は、
・被相続人の配偶者の有無
・子の数
によって異なります。

例えば、親の遺産9,000万円を子が相続する場合の法定相続分は1(9,000万円)です。
けれども、子が3人の場合は3等分するため、一人あたりの相続分は3,000万円になります。もし配偶者がいた場合の法定相続分は、1/4(2,250万円)。これを3等分すると、一人あたりの相続分は750万円です。

全ての相続人を把握する

親が亡くなり遺産相続が発生したら、早い段階で全ての相続人を把握しましょう。
血を分けた兄弟姉妹以外はいないと思っていても、親の隠し子や誰にも知らせることなく養子縁組をした子がいる可能性があります。そのことを確認せずに遺産分割協議を進めてしまうと、仮に話し合いがまとまった後に新たな相続人がいることが判明した場合は、その協議は無効となってしまいます。

最もベーシックな相続人の調査方法をご紹介します。
①被相続人の本籍地のある市町村役場において、除籍謄本を含む戸籍謄本を取得する
②①をもとに、被相続人の戸籍謄本を追いかけながら相続人を確認する
③もし被相続人が生前本籍を変更したことがある場合は、前の本籍地を管轄している市町村役場で戸籍謄本を取得する
④被相続人の全ての戸籍謄本を調べたら、相続人全員の名前をリストアップする

兄弟姉妹の配偶者は話し合いから外す

兄弟姉妹が親の遺産を相続する際に、兄弟姉妹の配偶者が口を出してくることも珍しくありません。そうすると、話し合いがこじれ長引きやすくなり、話が平行線のまま時間が過ぎていくだけとなってしまいます。

兄弟姉妹の配偶者は、被相続人と養子縁組をしていない限り法定相続人には該当しません。つまり、配偶者は口を出す立場ではないのです。遺言書で指名されていたり、被相続人の介護をしたりしていた事実があれば別ですが、兄弟姉妹の配偶者を交えて話し合いをする必要はありません。配偶者が原因で話がこじれているのであれば、お互いの立場をはっきりさせて口出しするのを控えてもらいましょう。それでも引き下がらず遺産分割協議の進行を邪魔するのであれば、家庭裁判所で遺産分割調停を申立てて、法定相続人のみで話し合える環境を整えるのが一番です。

不動産の共有は可能な限り避ける

子同士で親から引き継いだ不動産を共有することは避けましょう。例えば、相続時はお互い独身でも、どちらか一方が結婚した場合、「新居として自宅を利用したい」「自宅を売却してマンションの購入費に充てたい」というふうに、不動産の扱い方にずれが生じるかもしれません。

また、共同で不動産を相続すると、代を追うごとに相続人が増えて相続が複雑化していきます。兄弟姉妹で不動産を相続したら、代償分割または換価分割で不動産を処理するのが賢明でしょう。

遺留分について簡単に知っておこう

一部の法定相続人には、相続において財産を引き継ぐ権利と放棄する権利の他に、遺留分というものがあります。

遺留分とは

遺留分とは、法定相続人が被相続人の最低限の財産を請求できる財産の取り分のことです。民法は、その人が亡くなった時、誰がどのくらいの財産を引き継ぐかを定めています。必ず法定相続分にそって遺産を分ける決まりはないため、実際の相続では、法定相続人が法定相続分の財産を受け取るとは限りません。相続で最も影響力のあるのが遺言書ですが、中には「長男に遺産の全てを与える」というふうに、不公平な遺言もあります。そうすると、何も手にすることのできない法定相続人が出ることになります。こうした不公平を避ける役割を果たしているのが、遺留分というわけです。

遺留分が認められている法定相続人は、以下のとおり。
・配偶者
・子
・父母、祖父母

なお、被相続人の兄弟姉妹には遺留分は認められていません。

遺留分の割合

遺留分の割合は、続柄別に以下のように決められています。
・配偶者:法定相続分の1/2
・子:法定相続分の1/2
・父母、祖父母:法定相続分の1/3

例えば、配偶者と子が、9,000万円の遺産を分割する場合の法定相続分と遺留分は、以下のようになります。
法定相続分
遺留分(各1/4)

・配偶者:4,500万円
・子:4,500万円
・配偶者:2,250万円
・子:2,250万円

配偶者と父母の場合の法定相続分と遺留分も見てみましょう。
法定相続分
遺留分(配偶者1/3、父母1/6)

・配偶者:6,000万円
・父:1,500万円
・母:1,500万円
・配偶者:3,000万円
・父:750万円
・母:750万円

遺留分減殺請求とは

遺留分減殺請求(遺留分侵害請求)とは、遺産の分割で不公平な扱いを受けた法定相続人が、遺留分を侵害されたとして遺留分に相当する財産を請求することです。例えば、被相続人が3人の実子を無視して養子のみに1億円の遺産を全て相続させるという遺言書を残した場合、実子たちは法定相続分の2,500万円を受け取ることができません。この場合、実子たちは遺留分減殺請求を利用して、養子に対して遺留分をそれぞれ請求できます。

遺留分減殺請求が出来る期間

遺留分減殺請求の有効期限は、遺留分の侵害を知った日から1年間です。期間を過ぎてしまうと、時効が来て消滅してしまいます。ただし、手続き中に時効の進行を止めることは可能です(例えば、遺留分の請求を内容証明郵便で相手に送る)。その後何もしなければ、今度は金銭支払請求権(遺留分減殺請求権を使うことによって発生する権利)の時効がやってきます。金銭支払請求権の時効は、10年(2020年4月1日以前は5年)。それを過ぎると請求できなくなるので注意が必要です。

司法書士 飯田 真司

<strong>飯田 真司</strong>

信託相続先生の司法書士飯田真司と申します。大学在学中はお笑い芸人を目指していたものの、挫折し、司法書士の道へと方向転換致しました。司法書士として頑張りつつも、たまに漫才イベントを企画しています。

専門分野・得意分野
家族信託、相続関連
資格
  • 司法書士(法人登録番号:11-00552、登録番号:6918)
  • 簡裁代理(認定番号:1401068)
所属団体名
東京司法書士会
所属事務所
司法書士法人クラフトライフ
所属事務所の所在地
東京都世田谷区用賀4丁目28番21号

活動実績・専門分野

財産の管理・承継に関するリスクマネジメントとその手続きを専門分野とする。司法書士の専門である法務だけでなく、税務、財産活用等多角的な視点による提案力が強み。大手保険代理店、医療法人、社会福祉協議会等、セミナーや勉強会実績多数。

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私たちは、司法書士と税理士を中心とする、相続や家族信託のプロフェッショナルです。「何をすればいいか分からない」といった段階からご相談頂けますので、お気軽にご相談下さい。

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