相続診断士とは?
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相続のお悩みは多岐にわたり、個々のご家庭ごとにベストと思われる相続の形があります。「将来、残された家族が揉めないようにしたい」と思ってはいても、いざ相続対策を考えることとなったときには「どこに相談してよいかわからない」という方が多いのが現実です。
そんな中、相続を相談する先として、比較的身近な存在として知られるのが「相続診断士」です。
相続診断士とは?
相続診断士とはどんな資格?
相続診断士とは、一般社団法人相続診断協会が認定する民間資格です。相続の基本的な知識を身につけ、相続と家族の問題についてヒアリングを行い、「相続診断」ができることを目的としています。
「相続診断」では、相続が発生したときに手続きが円滑に進むかシミレーションし、想定される問題点を見極めて適切なアドバイスを行います。トラブルが発生しそうな場合には、個々の課題に合わせて弁護士や税理士等専門家につなぎ、実際に相続が円滑に進むよう橋渡しします。
また、相続診断士は、実際に相続が発生してから対処するのではなく、生前から相続問題に取り組んでもらうよう啓蒙活動を行うのも役割の一つです。相続に関する多岐にわたる問題を理解した上で、トラブルとなる前に相続について考えることの大切さを伝えています。
相続診断士になるには?
相続診断士になるには、相続診断協会が発行している相続診断士テキストに沿って解説動画を5時間受講し、相続に重要な「⺠法・相続税法」をはじめとする法律の正しい理解、さらには「正しい遺⾔書の書き⽅」「エンディングノートの普及と書き⽅の指導」等の周辺知識を習得します。
その後、協会主催の認定試験に合格することで資格を取得できます。
相続診断士の上位資格として、より高度な知識を身に付ける「上級相続診断士」資格も用意されています。
相続診断士はどんな人が取得している?
合格者の約9割が、相続との関連が深い⽣命保険・証券業・銀⾏等の金融業、不動産業の従事者です。企業が資格取得を推奨したり義務付けたりしているケースも多く、資格取得者も増加しています。
相続診断士に相続を相談するメリット
気軽に相談できる
生前にしっかりと準備をしておいた方がよいとはわかっていたとしても、実際に相続問題に手をつけるのはなかなかハードルが高いものです。また、実際に「相続に関する相談をしてみよう」と思ったとき、どこに相談すればいいのかわからない、という方も多いはずです。相続の専門家というと、弁護士や税理士を想像する方が多いと思いますが、身近に気軽に相談できる弁護士や税理士がいる方の方が少数派でしょう。
その点、相続診断士は、気負いせず気軽に相続相談できる相手です。「はじめから専門家に話を聞いてもらうのは敷居が高い」と思われる方にとっても、相続の基本的な知識を身につけ、相続診断をしてくれる相続診断士であれば依頼がしやすいかもしれません。
弁護士、司法書士、税理士、行政書士などの専門家を紹介してくれる
相続トラブルは多額の資産を持っている一部の富裕層に限ったものではなく、どの家庭でも起こり得ること。それほど資産を残す予定のない一般家庭においても、いざというときに相続が円滑に進むように生前からの準備が欠かせません。
相続診断士は、相続診断を通して適切なアドバイスを行うだけでなく、トラブルが発生しそうな場合には、個々の課題に合わせて国家資格をもった税理士や司法書士、行政書士、弁護士などの専門家に橋渡しを行ってくれます。
「税理士や司法書士をはじめとする専門家の知り合いがいる」「具体的な相談先を知っている」という方は少数派ですから、相続診断士を通じて然るべき専門家に話をつないでもらえるのもメリットとなります。
相続診断士に相続を相談するデメリットと注意点
相続に関する専門的な知識、知見が不足している
相続診断士が行うのは、相続に関する基本的な知識を前提に相続診断を行い、いざ相続を行うとなった際に円滑に進むようアドバイスすることです。さらに踏み込んだ相続対策を行いたい場合や、実際に相続トラブルに発展している場合などは、残念ながら相続診断士の知識、知見だけでは対応できません。
相続診断士は、あくまでも民間資格の一つに過ぎません。相続診断協会が発行している相続診断士テキストに沿って知識を習得し、その後試験を受けて70点をとれば合格できる仕組みになっています。相続に関する一定のレベルの知識はもっているとはいえ、実際どの程度の知識、知見を備えているかというと不安が残ります。
相続診断士の役割は、あくまでも相続で起こり得る一般的な問題を想定して助言を行い、相談者の個々の課題に対して然るべき専門家につなぐ橋渡し的な役割に留まります。
簡単にいうと、「相続についてまずは相談してみたい」といったニーズに応える、一時対応窓口になります。
保険や不動産等を営業されるリスクがある
生命保険と不動産は、いずれも相続問題が深く関わってくる可能性があります。実際、生命保険の販売では、「相続対策」「生前贈与」という観点から保険の必要性、利便性をPRしてくるケースも多く、相続の相談に乗ってもらっていたはずが、いつのまにか生命保険の営業になっていた、といった事例が多くあり、これは不動産についても同様です。
相続診断士の資格をもった生命保険や不動産の営業マンは、相続に関する基本的な知識はもっていると考えられます。ただし、相続の専門家の立場から総合的にベストな相続の在り方を考えるというより、「保険を売りたい」「不動産を売りたい」という営業目的がメインであるリスクがあることは覚えておかなくてはいけません。
相続診断士以外に、相続の相談できる専門家は?その特徴とは?
相続の相談先としては、法律の専門家である弁護士や司法書士に依頼するのが一般的です。実際、相続診断士が一時窓口として相談者の話を聞いた後、相談内容をもとに橋渡しを行う相手は、弁護士や司法書士になります。
一方、巨額の資産を保有する富裕層に対しては、日頃から税理士や銀行等が専門的な助言を行なわれているように、税対策と資産運用が中心であれば税理士、銀行等が相談先の候補となりますし、不動産会社や保険代理店の多くでも相続相談を受け付けています。
以下、相続の相談先の候補とその特徴をまとめてみます。
弁護士
法務全般に対応しつつ、紛争解決に精通した唯一の業種です。「遺留分の請求を受けた」「遺留分の請求をしたい」「土地の権利関係で揉めている」「親の財産を使い込んでいる相続人がいる」…など、何かしらの揉めごとがある場合、対応できるのは基本的に弁護士だけとなります。
※一部の紛争は司法書士も対応可能ではあります。
司法書士
相続関連の法律全般に対応しつつ、近年では、後見や家族信託の分野で活躍する先生も増えている業種です。他の業種にない特徴は、登記手続きに精通していることです。
税理士
相続税や贈与税、譲渡所得税等、税務のプロフェッショナルで、申告手続きを代理できる業種です。
相続税の対策では、相続税だけでなく、贈与税や譲渡所得税等、事案によりさまざまな税試算が必要となるので、相続を考える上では必須となる業種です。一方で、相続税を気にするほどの財産規模ではない場合には、必ずしも税理士は必要ありません。
銀行
銀行では、法律相談や税務相談、契約書作成や登記手続きといった業務で報酬を得ることはできませんが、税対策と資産運用を中心としたコンサルティングとして相続相談サービスを提供しています。ただし、大手都市銀行のコンサルティングは報酬が大変高額です。
不動産会社、保険代理店
不動産会社や保険代理店でも相続相談を受け付けていることがあります。「所有不動産の価格を知りたい」「相続税対策で死亡保険を利用したい」といった場合には、不動産のプロ、保険のプロである彼らに相談する意味もあるでしょう。
相続の相談先は、弁護士、司法書士、税理士がお勧め
弁護士への相談がおすすめなケース
相続紛争に発展することが予測される場合は、弁護士へ相談することをおすすめします。
相続紛争が顕在化した場合に唯一対応できるのが弁護士です。あらかじめ相続紛争に発展することが予測されるようなケースの場合、生前から弁護士に相談し、紛争になることを前提に相続に備えておくのが賢明です。
司法書士への相談がおすすめなケース
一般家庭の相続では、それほどテクニカルな節税スキームを利用する必要性やメリットがないため、資産家が利用するような税理士や銀行等のサポートを受ける必要はありません。
一方、一般家庭で相続について考えるときに大事となってくるのが、生涯にわたる生活費の確保です。注意しなくてはいけないのが、近年、認知症等による資産凍結のリスクが叫ばれているように、老後の生活資金を安全に管理するには、資産凍結への備え、対策が必要となります。その対策として昨今注目されている「家族信託」に精通している専門家が、司法書士です。
一般家庭の相続相談の際には、「家族信託」に精通した司法書士に依頼するのがおすすめです。
税理士への相談がおすすめなケース
資産家の場合、相続問題の最重要課題は相続税をいかに圧縮するかです。相続問題の中心となってくるのは、資産管理会社を活用した節税をはじめとしたテクニカルなスキームや、中小企業オーナーであれば事業承継税制を活用するなど、いわゆる税務対策です。つまり、資産家であれば、税務の専門家である税理士に相談するのが一番です。
税理士の中でも、とくに富裕層の相続税対策を得意とする税理士がおすすめです。
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相続相談で最も重視したいポイントとは?
ここまで見てきた通り、相続の相談先として相続診断士を選んでも、その後弁護士や司法書士、税理士といった専門家に紹介されることとなるため、相続の相談先として敢えて相続診断士を選ぶメリットはほとんどありません。
多額の資産をもつ富裕層となれば話は別ですが、とくに一般家庭の場合には、相続問題を考えるときに併せて重要となるのが、生涯にわたる生活費をしっかりと確保しておくことです。認知症による資産凍結リスクが高まっていることからも、できれば最初の段階から司法書士に相談した方が、生活保障を最優先とした最適な相続対策が実現します。
ただ、司法書士は、財産活用、税務、ライフプランといった観点が抜けていることが多いのも事実です。
この点、信託相続先生では、司法書士が中心となり、法務の観点に偏らない総合的なコンサルティングサービスを提供しています。初回相談は無料で対応していますので、まずは、お気軽にご相談されてみて下さい。