もっと早く知りたかった!家族信託を自分でやる際の注意点

もっと早く知りたかった!家族信託を自分でやる際の注意点

家族信託を自分でやる際の注意点

平成19年の信託法改正により可能となった、信託会社や信託銀行を介さずに信託の仕組みを利用できる家族信託。超高齢化社会と企業のコンプライアンス重視が重なり、認知症等判断能力の減退による資産凍結が社会的な問題となっている現在、その対策として注目されています。
しかしながら、家族信託を専門家に依頼した場合、信託財産額の1%前後と、非常に高額な報酬が掛かるのが一般的です。そうであれば、家族信託を自分でやることは出来ないかとお考えになられる方もいらっしゃることでしょう。
そこで、本記事では、家族信託を自分でやる際の注意点について、解説をしていきたいと思います。まずは、家族信託の活用例について解説をし、その上で、注意点と対応方法を解説します。
それでは、見ていきましょう。

家族信託の活用例~自分でやる際に当てはめてみましょう。

自宅を売却して、介護施設に入る際の原資とする

東京都内の介護付有料老人ホームの入居にかかる費用の相場は、年間3,876,000円(LIFULL介護WEBサイト掲載情報より)。施設生活が5年間であれば、1,938万円となります。なお、この金額には、介護サービス費や医療費、消耗品費等は含まれず、別途必要となります。年金のみで賄える金額ではなく、施設に入所すれば、預貯金を切り崩しての生活となるのが一般的でしょう。
40代、50代といった若いうちであれば、投資信託等長期的視点で資産運用していくことで、老後資金を用意していくといった対応を検討することができますが、経験則上、家族信託をご検討される方のほとんどは、75歳以上の方で、この世代になると、長期的視点での資産運用というのは、平均余命から考えると、難しいところがあります。
お金を準備するには、シンプルな理屈で、①収入を増やす、②支出を減らす、③資産を増やす、④資産を組み替えるの4つの方法があります。
このうち、①と③はご高齢となると難しく、②については、これまでのライフスタイルを圧迫することとなります。そこで、④の選択肢、具体的には、不動産の現金化を推奨します。
ただし、不動産の売却には、相応の判断能力が必要となり、売却時点において、認知症等により判断能力が減退していると、不動産売却が出来ない可能性がございます。
これに備え、介護施設に入るタイミング等、任意の時期に不動産の売却が支障なく行えるようにする方法として、家族信託が有用な手段となります。

介護施設入居後、自宅をリフォームして賃貸に出す

介護施設入居に伴い、自宅が空家となった場合に、賃貸に出すことで有効活用が可能です。賃貸に出すメリットとしては、賃料収入が入るのみだけでなく、相続税の評価において、居住用不動産の小規模宅地等の特例を使えない場合に、貸付用地としての評価減と、賃貸事業不動産の小規模宅地等の特例を適用できるようになることによる相続財産評価額の減額とで、相続税対策になることが挙げられます。また、反対に、空家となって、管理コストが掛かるのを避けるべく売却をしてしまうと、現金化されてしまうことで、不動産として承継するよりも、相続税の評価上の財産額が上がってしまうデメリットがあります。
また、不動産の立地条件にもよりますが、相続人の立場から考えると、土地の仕入れ費用が掛からない分、将来的に、建替えて運用することに経済合理性があることから、不動産を売却する必要性がない場合には、介護施設費用の確保等のために、まずは、賃貸に出して運用する方向で考えることが、相続人である子世代、孫世代における資産形成において重要となります。
しかし、ここで問題となるのが、賃貸に出す時点における判断能力です。
賃貸に出すには、賃貸借契約や賃貸媒介事業者や保証会社への委託契約等が生じます。また、多くの場合には、賃貸に出す前提として、リフォームや修繕が必要になります。これらを行うには、相応の判断能力が必要となります。
一般的に、可能な限り自宅で生活したいとお考えの方が多く、介護施設に入居される段階では、自宅での自立生活が困難な状態となってからなることが想定されます。そのため、リフォームや賃貸に伴う各種契約の段階では、判断能力が不十分となっている可能性があります。
このような問題の回避に家族信託が有効です。

賃貸アパートを建て替える

賃貸アパートを次世代においても売却することなく運用していく方針で、物件が老朽化しているような場合には、相続が発生する前に建替えを行うことで、相続税対策の効果が見込めます。相続発生後に建て替えを行っても相続税に影響はありませんが、相続発生前に行うことで、建物評価額と建築及び附帯費用の差額の分、相財財産を圧縮するこなるためです。
この際に問題となるのが、建築請負契約締結、賃借人の退去手続き、建物解体、測量や境界確定、融資、登記、賃貸経営など建て替えに必要なプロセスでの行為に関するそれぞれの時点における判断能力の有無です。いずれの工程においても、本人の判断能力が必要となりますので、その時点において認知症等になっていると、それ以降の工程のお手続きが出来ず、建替えは出来なくなってしまいます。
家族信託を利用することで、こうした事態を避け、建替えが出来るようになります。

賃貸収入を維持し、自身と妻(夫)の生活費に支障がないようにする

賃貸収入が生活基盤となっていて、これが滞ると生活に支障が出てしまうような場合、賃貸経営の維持は死活問題となります。特に、夫が存命のうちはある程度の年金もあり、賃貸収入への依存が小さくても、夫が先に他界した場合の妻の生活において、年金が少なく、賃貸収入への依存が大きくなることがあります。
賃貸経営には、入退去、修繕、家賃滞納対応、設備入れ替え等、法律行為が断続的に発生します。サブリースや管理委託をされている場合、家賃相殺で、一括借り上げや管理委託先が軽微な修繕等してくれることもありますが、限界があり、オーナーの承諾が必要な事項があります。
こうした手続きや承諾といった行為は法律行為であり、相応の判断能力を欠いていると、実行が出来ず、結果として、賃貸経営に支障が生じる可能性があります。こうした事態を防ぐために、家族信託が有効です。
蛇足になりますが、街の不動産屋さん等、小規模企業に管理委託されている場合や、入退去のみ不動産屋さんに任せ、管理はご自身でされているケースにおいて、重度の認知症等明らかに判断能力を欠いている親に代わり、子が親の名前で署名し、印を押すといったことが、実態して行われていることが多くあるのですが、こうした対応は、法的には無効で、賃貸トラブルが生じた際や、相続が発生した際、後見人が就任した際に、問題が顕在化し、トラブルとなる可能性があるので、注意が必要です。

土地を直系の血族に代々承継させていく

ご先祖から承継してきた土地を先々も守っていって欲しい、土地の名義が分散されることなく承継されていって欲しい等のニーズに対して、家族信託であれば、本人⇒妻(夫)⇒長男⇒孫と、自身の相続発生時だけでなく、その先の相続発生時の財産帰属も指定することが可能です。
ただ、遺留分の問題は生じるため、遺留分放棄や代償金の用意等のケアは必要となります。

家族信託を自分でやる際の注意点

家族信託のスキーム構築段階の注意点

家族信託は、財産管理と遺産相続の両面をカバーする仕組みであるため、自分でやる際には、その両面について検討が必要となります。
考え方としては、優先順位順に、本人と妻(夫)の生活保障、円滑・円満な財産承継、財産の活用、相続税対策について検討します。
これらは相互に影響し、例えば、本人と妻(夫)の生活保障のことを考えれば、不動産を売却してしまえば生活原資が出来ますし、円滑・円満な財産承継という観点からも、不動産が完全に可分な金銭に転換することから、適切と言えます。一方で、財産活用の観点からは、立地の良い不動産を売却してしまうのは、長期的視点に立てば合理性を欠きます。不動産投資において、土地の仕入れ代金が掛からないというのは、強烈なアドバンテージとなるためです。また、相続税の観点からも、不動産が現金化されてしまうことはマイナスに働きます。これは、時価1億円の不動産が、相続税評価上も1億円と評価されるわけではなく、もっと安く評価され、かつ、貸付地としての評価減や小規模宅地等の特例の適用が出来る場合があるためです。
つまり、本人と妻(夫)の生活保障、円滑・円満な財産承継の観点からは問題ないものの、財産の活用、相続税対策の観点からは問題があるということです。
このように、相互に影響する施策について、総合的な観点からどのような財産管理、遺産相続の道筋を作るかがスキームの構築です。
そして、このスキームに応じて実行手続きを行うことから、信託契約書の内容に影響することとなるため、家族信託実行前に、全体スキームを構築する必要があるのですが、この工程を経ずに、場当たり的に家族信託契約を締結してしまうと、目的を達成できないなどの不都合が生じ、解除して再契約する等、対応に無駄なコストを払うことになりかねないため、注意が必要です。最悪なケースとしては、不都合が発覚しても、その時点で委託者(財産管理等を託す本人)の判断能力を欠いている状態に陥ってしまっていて、修正不可能となることも考えられますので、取り返しのつかないこととならぬよう、十分に注意してスキームを構築することが重要です。

家族信託契約等実行段階の注意点

家族信託に関するスキームを構築したら、後はその通りに契約書を作成する等、実行していくのみとなりますが、実行前に確認・調整すべきことがございます。幾つかを注意点として挙げます。

金融機関への事前確認と信託契約書草案の調整

信託口座の開設や信託内融資を依頼する金融機関に対しては、事前に信託契約書の草案を提出し、チェックを受けて、必要に応じて修正する、調整作業を行う必要がございます。これは、金融機関ごとに、信託口座開設と信託内融資いずれも、独自のルールがあり、これに適合させなければ受け付けてもらえないためです。
なお、金融機関ごとに独自のルールがあるというのは、A銀行で問題がないとされた信託契約書がB信用金庫では問題ありとされることがあるという意味です。
現状、信託口座開設、信託内融資ともに、司法書士等専門家を介さなければ、手続きを受け付けない金融機関がほとんどで、家族信託を自分でやる場合には、これらの利用は出来ない可能性が高いことに注意が必要です。

住所や氏名の変更登記

不動産を信託財産に含む家族信託契約では、信託契約後に、遅滞なくその旨の登記手続きをしなければなりません。ただ、この登記手続きを行う上で、委託者の住所又は氏名が、登記申請時点(正確には、登記申請に添付する委託者の印鑑証明書上の住所又は氏名)と登記簿上で異なる場合には、前提として、変更や更正の登記手続き経なければ、信託に伴う登記手続きが受け付けられないため、注意が必要です。

後継受託者の了承

家族信託では、受託者が財産の管理等を行いますから、その存在が必要不可欠です。そのため、何らかの事情により、受託者が業務を継続することが出来ない状況となった場合の、予備の受託者を用意し、その人を後継受託者として信託契約書の中で指定しておくことが大切です。ただ、勝手に指定しても、就任してくれなければ意味がないため、予め本人の了承を取っておくことに注意しましょう。
なお、金融機関によっては、後継受託者の有無が信託口座開設・信託内融資チェックの要素となっていることもあり、この観点からも、後継受託者の指定は必要です。

家族信託契約後の注意点

家族信託契約は、作って終わりではなく、作ってからがスタートとなります。
信託契約後も、受託者は、会計帳簿を付け、エビデンスを残し、会計資料や信託財産目録を作成し、事案によっては毎年税務署への届出を行っていきます。
受託者においては、こうした日常業務を適切に行っていくことに注意が必要となりますが、最も注意を払わなければならないのが、信託契約書のメンテナンスです。
家族信託は新たな仕組みであり、また、長期に渡ることから、判例や先例、通達や金融機関の対応変化等により、当初の信託契約書の修正作業が必要となることがございます。こうした変化にアンテナを張り、情報を集め、必要に応じて信託契約書を修正する作業が家族信託では重要で、長期的かつ継続的に注意を払っていく必要があります。

家族信託を自分でやる際の注意点のまとめ

全体スキームを構築すること

本人及び妻(夫)の生活保障、円滑・円満な財産承継、財産の合理的活用、相続税対策、これら4つの観点から総合的な財産管理及び承継のスキームを構築し、これに基づいて家族信託を含む実行手続きを行っていくこと。

利害関係者のコンセンサスの確保と障害の解消

金融機関やご家族といった、家族信託における利害関係者のご意向の事前確認と調整作業をきちんと行い、コンセンサス取って手続きを進めること。
想定外が起きぬよう、実行作業において障害となる事項について、事前に確認をしておくこと。

信託開始後のモニタリング

費用と手間を掛けて構築した家族信託に、目的を達成できなかったり、過度な税負担が生じたりといった問題が生じることのないように、法務・税務・金融機関対応についてモニタリングしていき、必要な対応をしっかりと継続していくこと。

家族信託のご相談は信託相続先生へ

家族信託の手続きを自分でやるとした場合の注意点について解説させて頂きました。認知症等判断能力の減退ないし喪失に伴う資産凍結の問題は、資産の大小に関わらない普遍的な問題であるため、資産家のみならず一般家庭においても、とても大切な備えです。
しかしながら、家族信託サービスの一般費用相場は財産額の1%程度と高額で、ご利用を躊躇され、自分でやることをご検討されるお気持ちには強く共感致します。
一方で、家族信託はその実行にあたって押さえておかなければ大きなトラブルやリスクにつながるポイントが多く、また、ご家族の状況や資産の状況によっても千差万別です。専門家でも精通している者が少なく、法務の側面で精通していても、横断的知見を持たない者がほとんどです。つまり、専門家からみても、とても難しい仕組みなのです。こうした事情から、自分でやるというお考えに共感する一方で、どうしてもそれは難しいだろうというのが正直なところです。
私たちは、こうした現状の家族信託サービスについて、疑問と危機感を持ち、これを改善すべく集まった専門家の集団です。
最後に信託相続先生のサービスについてご紹介をさせていただきますので、ご参考頂き、宜しければ、まずは無料相談をご利用ください。

信託相続先生とは

一般家庭世帯においては、富裕層に対して行われているような、弁護士や税理士、銀行等による財産に係る専門的な助言を受ける機会が少なく、問題が生じてから対応されるケースが多いのが現状です。
しかし、一般家庭世帯にこそ、良質な法務・税務を中心とした、財産の管理・活用・承継に係る総合サービスを届けたい。私達信託相続先生は、こうした想いを共有する専門家によって構築された、複数の専門事業者による共同プロジェクトブランドです。

特徴1~安心の料金設定~

一般家庭の方が安心して家族信託のご利用をいただけるよう、豊富な経験を基盤としたサービスの効率化と司法書士の一元対応により、低価格でのサービス提供を実現しております。
家族信託に伴う登記手続きを含め、15万円前後からと、圧倒的な低価格での対応が可能ですので、安心してご利用を頂けます。

特徴2~司法書士による直接対応と高度な専門性~

信託相続先生の家族信託は、様々な事案を通じた家族信託および財産管理・承継等にかかるノウハウ、知見の共有が、信託相続先生に所属する司法書士の間で行われる仕組みとなっている(当然ながら個人情報の共有は行いません。)ことから、単一の事業者では難しい、最新の情報とノウハウを常に更新することが可能で、高度な専門性に基づくサービスを提供しております。

特徴3~総合的なプランニング~

法務視点に偏らずに、税務・会計、財産の維持・活用、ライフプランといった多角的な観点からお客様の抱える課題を抽出し、総合的なプランニングを構成した上での家族信託サービスが可能です。
お客様のご指示のままに家族信託を組成するのではなく、お悩みの課題と、お客様が気づかれていない潜在的課題を抽出した上で、その対策案として、家族信託が適しているか、その他に必要な施策はないかといった総合的な視点からアドバイスをさせていただいております。総合的な観点からご検討いただくことで、家族信託におけるデメリットや危険性も踏まえ、それらを回避した、後悔しない家族信託のご利用をいただくことができます。また、そもそも家族信託が適さない場合や、他の方法の方がよりコストが安く済む等、家族信託のみに拘ることなく、お客様目線でお客様に合ったご提案をさせていただいております。

特徴4~安心の事後支援~

家族信託は作って終わりではなく、作ってからがスタートとなります。遺言や贈与等であれば、実行して終わりとなりますが、家族信託は、実行によって財産管理が始まることとなるためです。
家族信託を開始すると、受託者は、他人の財産を管理する者として、信託契約及び信託法に基づき適切な管理をしていかなければなりません。会計処理や税務署届出、判例構築や税務通達、登記実務先例、銀行対応の変化等、外部要因に伴う契約書修正等、具体的にどうしていけば分からないのが通常です。
また、家族信託により、信託された財産は受託者の名義となりますので、恣意的な財産管理が行われていないかの確認も重要で、財産管理の状況をクリアにしておくことで、相続人間の不信感を防ぎ、受託者自身の身の潔白を証することができます。
信託相続先生の適切な信託の運営をサポートする事後支援サービスにより、家族信託を安心してご利用していただけます。

司法書士 飯田 真司

<strong>飯田 真司</strong>

信託相続先生の司法書士飯田真司と申します。大学在学中はお笑い芸人を目指していたものの、挫折し、司法書士の道へと方向転換致しました。司法書士として頑張りつつも、たまに漫才イベントを企画しています。

専門分野・得意分野
家族信託、相続関連
資格
  • 司法書士(法人登録番号:11-00552、登録番号:6918)
  • 簡裁代理(認定番号:1401068)
所属団体名
東京司法書士会
所属事務所
司法書士法人クラフトライフ
所属事務所の所在地
東京都世田谷区用賀4丁目28番21号

活動実績・専門分野

財産の管理・承継に関するリスクマネジメントとその手続きを専門分野とする。司法書士の専門である法務だけでなく、税務、財産活用等多角的な視点による提案力が強み。大手保険代理店、医療法人、社会福祉協議会等、セミナーや勉強会実績多数。

  • 相続登記
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私たちは、司法書士と税理士を中心とする、相続や家族信託のプロフェッショナルです。「何をすればいいか分からない」といった段階からご相談頂けますので、お気軽にご相談下さい。

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